読書

加藤佳一「バスで旅を創る!―路線・車両・絶景ポイントを徹底ガイド」

乗ることで旅気分が味わえるバス路線を紹介した本、と言えばいいか。「一日乗車券でレトロなバスを味わい尽くす」と言いつつ一日乗車券がない路線を紹介していたり、「バスは電車より速い」と言いつつ電車より遅いバス路線を紹介していたりと、全体的に「ゆ…

半藤一利+保阪正康「昭和の名将と愚将」

昭和時代の軍人を、「名将」と「愚将」に分けて論じている。対談形式でわりと読みやすいという面はある。名将編は雑誌の掲載をまとめたもので、愚将編は語り下しとのこと。 結局、名将は自分の持ち場では功を上げたもののそれが全体の成果にならず、愚将の所…

浅羽通明「右翼と左翼」

右翼とか左翼とか言われているけど、実際のところ右翼、左翼って何?というあたりが書かれている。話し言葉で書かれているのが個人的には向かない感じがしたが、内容自体は興味深いものだった。西欧での起源については「議会の右側、左側」レベルのことしか…

奥野修司「沖縄幻想」

今回、沖縄に行くにあたって事前に読んでみた。若干話が脱線したり、交通に対する見解については違和感を感じる部分もあったが、あまり報じられない沖縄の問題について、筆者ならではの視線で多々書かれており、参考になった。補助金漬けの実態についても書…

梅田望夫「ウェブ進化論−本当の大変化はこれから始まる」

有名な本ですね。2006年に出された本であり、その後に出てきたYoutubeやTwitterなどの新しいサービスについての記述はもちろんないが、GoogleやAmazonなどの記述は現在読んでも意味がある内容になっている。今後のウェブの進化の方向性として「ネットのあち…

古川愛哲「九代将軍は女だった! 平成になって覆された江戸の歴史」

九代将軍徳川家重は女性だったという説について書かれているが、それは第一章に記されているのみで、第二章は徳川家康について、第三章から第五章には江戸時代の事柄についての小話が雑多に並べて書かれている。書名の内容は本書全体の30%くらいか。正直な…

谷岡一郎「「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ」

私は、大学の頃に社会調査の初歩について学ぶ授業を受けていた。そんなことも思い出しつつ本書を読んでみた。巷に出回っている社会調査についての問題はわかることができるが、なんというか、著者の人柄が悪いほうに滲み出ていて、不快な感すらする。そもそ…

津田大介「Twitter社会論 〜新たなリアルタイム・ウェブの潮流」

私はTwitterをやっており、@tsudaさんもフォローしているのだが、その中で興味を持って購入した。私が新書を買うのはかなり珍しいことである。 第1章でTwitterに関する一般論、第2章で筆者のTwitter活用法、第3章でTwitterが現実社会に与えた影響と具体的…

松村劭「新・戦争学」

歴史を学ぶにあたって必ずついてまわるのが戦争である。私は、近代戦は全く疎いのでそれについて書かれている本書を読んでみた。いくつか出てくるたとえ話(ビジネスとか相撲とか)がちょっと要らないなとか、書かれていることが一文民には考え方が及ばない…

青木栄一「鉄道忌避伝説の謎―汽車が来た町、来なかった町」

「鉄道忌避伝説」というのは、鉄道が各地に敷設された時期に、その鉄道を自分たちの街に敷設されることを反対した動きがあったという言い伝えのことを指している。巷では常識として広まっている鉄道忌避の動きがあったという伝承が、実は大半が事実と反して…

今枝由郎「ブータンに魅せられて」

ブータンに住んでいた経験がある著者がブータンについて記した本。好意的であるが客観性を持った視線でブータンについて書かれている。日本とブータンではかなりの違いがあるが、どちらがいい、悪いではなくて、自国民の特性にあった道を選べばいいのではな…

塩田潮「民主党の研究」

民主党の代表を務めた、鳩山、菅、小沢のパーソナリティに関する記述がけっこう多いのは、民主党が代表の性質に大きく依存しているゆえんか。特に小沢現代表の記述が多い。代表に対象を絞ったほうが書きやすいという事情もあるのかもしれない。結党からの出…

大城将保「琉球政府」

ひるぎ社という会社が出している「おきなわ文庫」というシリーズの文庫本。Amazonでは取り扱っていないようだ。 戦後の沖縄の歴史について書かれている。沖縄の歴史についてはほとんど知らないゆえに、事実関係を拾っていくだけでもけっこうためになった。沖…

筑波君枝「こんな募金箱に寄付してはいけない」

書名から受ける印象とは裏腹に、広義のボランティアについて広く浅く書かれている。「第1章 こんな募金箱にお金を入れてはいけない!?」の内容が一冊分あることを期待していたのだが、内側についての考察はなしに、次の章へと進んでいく。ちょっと期待はずれ…

真田信治「方言は絶滅するのか―自分のことばを失った日本人」

思っていたよりも言語学の専門的な内容で、方言の存亡についての幅広い分析を期待していた身としては、肩すかしをくらった感じだ。最後には方言についての提言があるが、その割合は少ない。方言の変容に関する事例を知りたいという人向けの本だと思う。方言…

将基面貴巳「反「暴君」の思想史」

政治思想について書かれた本で、私は政治思想に関する知識がほとんどないので、特に西洋の思想史についての記述は、読み進めるのに苦労したというのが正直なところだ。本書のキーワードの一つである「共通善」という言葉さえも知らなかった。そういう意味で…

星浩「自民党と戦後―政権党の50年」

2004年の参院選後、2005年の衆院選前の時期である、2005年4月に刊行された本なので、自民党の現状として書かれている部分については、2005年の衆院選で大勝してから現在に至るまでとのギャップを感じる部分があるが、2004年頃までの自民党の通史として見れ…

三浦展「ファスト風土化する日本―郊外化とその病理」

「ファスト風土」という言葉の提唱はおもしろいと思ったが、「北関東では犯罪が多い」とか「ジャスコの近くで犯罪が起きている」とか、印象を以て書かれている感があり、そのアプローチの仕方が若干乱暴ではないかと感じた。問題提起はいいのだが、それを解…

保阪正康「戦後政治家暴言録」

2005年4月に書かれた、戦後の政治家の暴言についていくつかピックアップして、それを分析している。メディアの影響力についていくつか触れられているが、個人的にはその部分についてもう少し掘り下げてほしかったが、そうなるとバランスが崩れてしまうか。…

藤原正彦「国家の品格」

言わずとしれたベストセラー本。真の国際人とはどうあるべきか、とか、グローバリズムに反対している点など、納得できる内容は多くあるのだが、一部に突飛というか、的外れな部分もあって、その分、説得力を欠いている。講演記録をもとに作成されたからか、…

佐久間充「山が消えた―残土・産廃戦争」

私が大学生の頃、授業で佐久間充著「ああダンプ街道」を読むのが必須になっていて、当時はそれなりに感銘を受けて読んだものだったが、その著者が「ああダンプ街道」の続編と言うべき本書を刊行していたのは知らなかった。見つけて早速読んでみた。 建設資材…

高田純次「適当論」

著者:高田純次、と書かれているが、高田純次が書いた本、というわけではない。和田秀樹という精神科医がからんでくるのだが、どうもしっくりこない。第2章の高田純次語録を和田秀樹が分析する、などは、無理矢理講釈をたれている感じがして、読んでいてつ…

赤川学「子どもが減って何が悪いか!」

少子化に関して世の中に出回っている通説に対する疑問を、具体的にデータを用いて示している。確かに、一つのデータでも自説に都合のいいように解釈されて、それが通説になってしまうということは少なからずあることである。それに対して疑問を呈し、最終的…

田村秀「自治体格差が国を滅ぼす」

私もかねてより人口が集中する自治体と、人口が減少する自治体の差の問題を感じていたので、この本を読んでみたのだが、正直なところ、それほど期待したほどの内容ではなかった。勝ち組自治体として、千葉県浦安市、愛知県豊田市、兵庫県芦屋市、負け組自治…

三浦展「下流社会 新たな階層集団の出現」

「はじめに」の最初に「下流度」チェックなるものがあって、その1番目の項目が「年収が年齢の10倍未満だ」とある。この言い回しからしてだめな感じがするが、読み進めていっても、その最初の印象が覆ることがなかった。著者自らあとがきで「統計学的有意性…

藤川大祐「ケータイ世界の子どもたち」

子どもの携帯電話の使用に関する問題についてまとめられた本。実情について書かれたあたりは参考になったが、社会的な問題に対する提起が記されている部分は、どうも論が膨張しすぎているように感じた。たとえばクルマ社会についてのくだりとか。それでいて…

東海林さだお「丸かじり劇場メモリアルBOX」

「丸かじり」シリーズから108編を精選、という本。ベストアルバムみたいなものか。全部で700ページ弱あって、内容もおもしろいし、一つ一つ読むのはそれほど苦ではないが、一気に読むのはたいへん。 個人的には食材を擬人化する話が好き。丸かじり劇場メモリ…

竹熊健太郎「篦棒な人々ー戦後サブカルチャー偉人伝」

康芳夫、石原豪人、川内康範、糸井貫二の四氏へのインタビューを中心にまとめられた本。糸井貫二のみ関係者のインタビュー等が中心で最後に本人へのインタビューが掲載されている。どちらかというと「糸井貫二に出会うまで」のドキュメンタリーと言った方が…

草野厚「連立政権―日本の政治1993〜」

連立政権といえば現在では自民・公明の連立政権であるが、1999年に書かれたということで、細川、羽田、村山、橋本内閣時代の連立政権について書かれている。小渕内閣はこのときは現在進行形だったので少し扱いが特別。わりと堅くまとめられていて、当時の状…

寺谷ひろみ「暗殺国家ロシア―リトヴィネンコ毒殺とプーチンの野望」

イギリスで起こったリトヴィネンコ毒殺事件(検索すると「リトビネンコ」という表記のほうが一般的のようだがここは本書の表記に従う)とロシアの現状についてまとめられた本。リトヴィネンコ毒殺事件のくだりはまだついていけたのだが、ロシアの現状(オリ…