読書

養老孟司「バカの壁」

言わずとしれたベストセラー本。確かにいいことを言っていると認めるべき点がいくつかあるものの、論がとっちらかっていてまとまっていない。養老氏が話した内容を編集部の人たちが文章化したものということで、そういう"らしさ"がよく出ている。小話の集合…

太田光・中沢新一「憲法九条を世界遺産に」

爆笑問題太田光と宗教学者中沢新一による対談を中心に構成されている。対談はどうしても内容が散漫になったり、脱線したりしてしまうものだが、憲法九条という明確なテーマを定めている本書もその例外ではない。太田光がボケるのはそれが役回りだからいいの…

毎日新聞旧石器遺跡取材班「古代史捏造」

前に読んだ「発掘捏造」の続編的な本。結局読んだ後に感じたのは、考古学会の閉鎖的な環境だ。疑問を感じる声があったとしても、それに対する圧力の影響で、そういう声が出にくいという状況が垣間見られる。その分、マスコミなどの外部からの力に対しての拒…

毎日新聞旧石器遺跡取材班「発掘捏造」

考古学研究家による旧石器捏造事件について、毎日新聞のスクープ記事を発表するまでの経緯とその影響、課題点についてまとめた本。報じただけで終わり、ではなく、このように本にしてまとめるのは意義があることだと思う。かなり慎重な姿勢で取材に取り組ん…

香山リカ「なぜ日本人は劣化したか」

香山リカといえば、私としてはファミコン通信の連載(「尻に目薬 目に座薬」)をおぼろげながら思い出すのだが、今ではすっかりテレビでもおなじみの顔になって隔世の感がある。 さて、本書であるが、「劣化」という言葉をオールマイティーに使っていて、論…

田辺寿夫・根本敬「ビルマ軍事政権とアウンサンスーチー」

学生の頃、ビルマに関する本を何冊か読んだことがあって、その関連で田辺寿夫氏が記した「ビルマ―「発展」のなかの人びと」は読んでいた。それから10年ほど経って、最近になってビルマ情勢がまた関心を集めている。そういうわけで5年前に書かれた本ではある…

村上正邦・平野貞夫・筆坂秀世「自民党はなぜ潰れないのか―激動する政治の読み方」

村上正邦、平野貞夫、筆坂秀世の三氏の鼎談という形(最終章では亀井静香が加わる)で自民党を中心とした政治に関する話がまとめられている。政治に関する知識があるという前提で話が進んでいくので、そういう知識がないと読むのは難しいかと思う。私として…

タモリ「タモリのTOKYO坂道美学入門」

あのタモリが東京の坂道についてまとめた本。坂道の写真と説明、散策ルートの紹介で構成されている。説明の中のちょっといい話が楽しい。どちらかと言うと、実物を見るための案内本というように思う。本を見て、実物を見て、また本を読み返すことで100%楽し…

横田好太郎「キヤノンとカネボウ」

カネボウを辞めてキヤノンに入社した人が書いた本。キヤノン在職中ということで、予想どおりキヤノンの悪いところはほとんど書かれていない。朝、下丸子駅からキヤノン本社までが混雑することと、長時間労働をしていること(もっともこの件については著者は…

早坂隆「日本の戦時下ジョーク集 太平洋戦争篇」

「日本の戦時下ジョーク集 満州事変・日中戦争篇」の続編。結局、人間の普遍的な部分というのはあまり変わらないということは思った。ジョークというのはある種の情報伝達の方法であるとも考えられる。現代社会は個人が得られる情報量が膨大の量になっていて…

星亮一「会津落城」

最近話題になった会津藩の終焉について書かれた本。会津というとことさら悲劇性が強調されているふしがあるが、本書はそういった要素は強調せずに、会津藩の終焉について分析的に記してある。結局のところ、鳥羽・伏見の戦いなどで藩が疲弊したこと、藩幹部…

辻由美「カルト教団太陽寺院事件」

集団死亡事件を起こした太陽寺院のことについて書かれた本。日本語で太陽寺院のことについて書かれた本はほとんどないようで、そういう意味でも貴重な存在だ。もともと作者はオウム真理教の一連の事件がきっかけでこの本を書いたというが、オウム事件との対…

畑川剛毅「線路にバスを走らせろ 「北の車両屋」奮闘記」

DMV制作までのドキュメンタリーを中心に、その紹介や、JR北海道の先進的の車両開発について書かれた本。私は工学的な知識が皆無なので、そういう記述を読むのは難しかったが、それでもわかりやすく書かれているというべきか。DMVについて一通り知りたいと…

斎藤潤「日本《島旅》紀行」

実際に著者が訪れた島についての紀行文。誰も知っている観光客も多く訪れるような島から、誰も知らないマイナーな島まで様々な種類の島を取り上げている。特に訪れるのも難しい島に実際に訪れることができた喜びというのは、私も路線バスの旅で運転本数が少…

湯浅顕人「ウイニー―情報流出との闘い」

文字どおりWinnyに関して書かれた本。Winnyどころかコンピュータについてもあまり詳しくない人にもわかりやすいように書かれている。よくまとまってはいるが、22ページと35ページにほぼ同じ内容の小節がそのまま繰り返されて載っている。最初に読んだときに…

万大「通勤電車で座る技術!」

この本に書いてあることを一通り実践するとなると座る前に疲れそうだが、何事も工夫が必要という点では共感できる。個人的にはだいたいがわかりきったような内容だったが、人によっては目から鱗、となるのだろう。 なお、私は座る立つにはあまりこだわってい…

ローラ・スタック「定時に帰る仕事術」

キャッチーなタイトルなので読んでみた。アメリカの人が書いた本なのでそれがそのまま日本に適用できるとは思えない。こういう本はエッセンスの一部を取り入れるくらいの気持ちで読んだほうがいいと思う。あと、本に直接何かを書かせるページがあるのだが、…

早坂隆「日本の戦時下ジョーク集 満州事変・日中戦争篇」

戦時下のジョーク集という面白い切り口の本だと思い読んでみたが、ジョーク集シリーズの一つということらしい。ジョークとか漫才のかけあいが書いてあるのだが、文章にしているからか、全然笑えなかった。資料としての価値はある本だとは思う。日本の戦時下…

岡崎昂裕「自己破産の現場」

債権回収に携わっていた著者が現場での経験などを元に記した著書。ある種の距離を持ったような淡々とした描写が続いていく感じがするが、業界や社会への直接的な批判も散りばめられている。ちょっと自己弁護がましさも感じた。自己破産の現場 (角川oneテーマ…

谷口克広「信長軍の司令官―部将たちの出世競争」

織田信長家臣団について書かれた書。信長が天下統一に近づく原動力になった配下の武将の役割を時系列で、信用に足る史料から真実に近いと思われる内容をまとめている。 塙直政がここまで大きな役割を持っていたとは初めて知った。逆に丹羽長秀は一国を任せら…

マキアヴェリ「君主論」

さすがに2週間読んで完全に理解できるような書物ではないが、読まないことには始まらないのでまず読んでみた。およそ500年前に書かれたものではあるが、現在でも通じることが数多く書かれている。普遍的なことが書かれているからこそ、現在でも読まれている…

野口悦男「とっておきの温泉 危ない温泉」

前半は温泉の問題点を記していて、後半は厳選した百の温泉を紹介している。一人称が「俺」というのが珍しい。若干感情任せなきらいがある。温泉紹介は、著者の住居の関係か、温泉そのものが偏っているのかはわからないが、東日本の温泉が多く、西日本の温泉…

山田真哉「さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学」

誰でも挫折せずに最後まで読めるという狙いどおりに、平易に読み通すことができる。会計学という未知の世界を垣間見るとこができるという意味ではいい本だと思う。ただ、買って愛読書にするという類のものではないとは思った。その道を行くのであればこのレ…

戸川猪佐武「小説吉田学校〈第1部〉保守本流」

吉田茂を中心にそれをとりまく人々についての動きを描いている。歴史小説とカテゴライズするのが妥当かと思う。端折るところは大幅に端折っている。素材はいいが、難しい素材である。それをうまくまとめていると感じた。ただ、人間関係の描写におもしろみが…

石川文洋「日本縦断 徒歩の旅―65歳の挑戦」

北海道から沖縄までの徒歩旅行の記録。実際に歩いて旅行をしようと思っている人には参考になるような情報が盛り込まれているが、旅行記としては左派な主張が目立ちすぎているのが気になった。ただ、地方の現状に関する描写については価値を感じた。日本縦断 …

八幡和郎「江戸三○○藩 最後の藩主」

目の付け所は面白いと思ったのだが、各藩の説明が似たり寄ったりになって、途中で読むのがだれてくる。それ以前に、筆者の視点が主観的な印象を受ける。現在的な視点で語っているもの気になる。冗長な記述も目立ち、筆力のなさを感じた。後で調べたところ、…

司馬遼太郎「峠」

読んだのはけっこう前のこと。上巻、中巻の密度に比べると下巻の密度が薄いように感じた。北越戦争がなんかあっけない。Wikipediaには丸谷才一が司馬遼太郎のことを「全体の五分の三あたりのところから雑になる」と評したと書かれているが、まさにそんな感じ…